発表題目:真理はいかにして多元的でありうるのか
―真理の多元主義自体の多元性を検討する―

原田淳平(大阪大学/日本学術振興会特別研究員)

 本稿の主な目的は、「真である仕方は一つより多い」というテーゼを掲げる真理の多元主義(alethic pluralism)が主張する内容と、それが抱える問題点を検討することである。真理の多元主義は、真である仕方が複数あると主張する点で、唯一の真である仕方が存在すると主張するインフレ主義(伝統的な真理の理論)と対立する。他方で真理の多元主義は、真理には哲学的関心を持つに値する実質的な本性があると主張する点で、真理を単なる論理的装置とみなし、実質的な本性を持たないとするデフレ主義(deflationism)と対立する。それゆえ真理の多元主義は、既存の二つの真理の理論とは異なる第三の真理の理論である。
 しかしながら、現在では様々なアプローチから真理の多元主義が研究された結果、細部において異なる複数の多元主義的な理論が提出されている。それに加え、ここ二十年という短い期間で様々な多元的理論が十分精査されないまま生み出された結果、多元主義の批判者からは、真理の多元主義が誤りであるというよりは、その主張がそもそも曖昧であると指摘されることも多い。こうした背景を鑑みて、本稿では議論を次のように進める。
 第一に、どのような理論が真理の多元主義と呼ばれるのかを明らかにする。ここではペダーセンとC.D.ライトの議論を手がかりに、「真理が実質的性質を持つかどうか」と「真理は単一の性質を持つかどうか」という基準を用いて、カテゴリー分けを行う。第二に、中心的な多元主義のモデルを取り出して、それらの定式化を行い、各多元主義間の差異が分かるように理論の輪郭を描写する。具体的には、C.ライトの解釈としてM.P.リンチが提出した単純な真理の多元主義(simple alethic pluralism)、ペダーセンの真理の選言主義(alethic disjunctivism)、リンチの真理の機能主義(alethic functionalism)などの定式化を通じて、各理論が真理の「多元性」をどのように理解しているのかを明らかにする。最後に、真理の多元主義が直面する問題および多元主義に対する批判を概括した上で、上での定式化した多元主義がこれらに対してどのような対応が可能なのかを考察する。