哲学を切り開け!

オーガナイザ:田中紗織(MID)、村上祐子(東北大学)

ゲストスピーカー:
中川雅道(早稲田摂陵中学・高等学校講師)、南部龍佑(コンサルティング会社勤務)、藤波努(人工知能研究者)、村林充(株式会社イーストリング代表取締役)

企画意図:哲学の学術業界における長引く就職難に伴い、哲学で生計を立てられるようになるまでには、大学院終了後の極めて長いスパンでの人生設計が求められている。若手研究者や学生が、哲学で「食う」ことをあきらめるとしたら、他にどんな道があるのか、今改めて考えたい。
 
目的:学生や若手研究者たちが、哲学を専門的に学んだ後のキャリアプランとして、幅広い職業の中で哲学を活かせる自信をつけられるようにする。さらに、普段、哲学専攻の学生を指導している教員の皆さんにも、民間企業、ベンチャー企業を含めた幅広い選択肢を見据えて、積極的に学生の就職相談ができるように促す。
 
対象:主に、哲学専攻の大学院生や、これから哲学を専門にしたいと考えている学部生。教員。
 
各ゲストスピーカの内容:
中川雅道(中学教師)
「対話を通して考える場、教育現場でできること」「哲学が街に出る!」ことを目指す、鷲田清一氏が大阪大学文学研究科に作られた臨床哲学講座でこれまで哲学を学んできた。また、臨床哲学から派生したCafé Philo(http:// www.cafephilo.jp/)という団体に所属し、「哲学カフェ」という対話イベントを繰り返 してきた。様々な人たちと出会う中で、「哲学する」という経験を切実に求める声が、日本では根強いということを確信することになった。2011年度からは、学校の中でそのような「対話を通して考える」という活動を行うために、学校に就職する。哲学という学問の周縁で活動してきた。だが、それゆえに可能であるような哲学の様々な可能性について語ってみたい。
 
南部龍佑(コンサルティング会社)
「哲学研究で社会で生き抜くスキルを身につける」「哲学は何の役に立つのですか?」という問いに対して、うしろめたさを感じずに、具体例をもって答えられるひとは実はあまり多くないのではないだろうか。本トークでは、私自身がビジネスの世界で経験した苦労話をもとに、哲学研究のなかで身につけられる、哲学研究以外にも応用のきくスキルとは何かということを話したい。特に研究職以外に進む哲学系大学院生を指導する教員の方を対象に、研究職以外のキャリアでも人生の資産となるスキルは何なのかということを議論したい。
 
藤波努(人工知能研究者)
「身体知研究と哲学」身体知研究を進めるにあたり、精神も身体も一つのもの(神)の属性であると考えたパスカルに注目している。認知症高齢者介護の地域ケアの面からも、人が互いに支え合うことの倫理的根拠がパスカルに求められるのではと考えている。近所や隣人というのは、精神的な意味ではなく、地理的あるいは身体的な意味として、共同体の身体みたいなものと考えたい。トークでは、いち人工知能研究者の日常を紹介しながら、身体知研究と哲学的概念装置、および倫理的課題の関係について話したい。
 
村林充(株式会社イーストリング代表取締役)
「哲学系大学院が与えてくれた新しいキャリアパス」この春で大学院在学中に立ち上げた会社がようやく5期目に入った。「起業家」というと聞こえがよいかもしれないが、考え学び続ける場所を確保しようとあがいた末にたどり着いたのが現在地なのだと感じている。本トークでは、起業に至った経緯を基点に、ビジネスの現場で感じた哲学系大学院生のキャリアパスの可能性について話したい。特にアカデミアとビジネスの違いと共通点を踏まえながら、大学以外の場所で考え学び続ける環境を手に入れるためにできることはあるのかという点を中心に議論したい。