知覚と行為の相互関係について――S.L.Hurleyの観点から

菅原 裕輝(名古屋大学)

 知覚と行為は、私たちがふだん想定しているよりも、ずっと深く相互依存している。そしてこの相互依存は、意識や認知にかかわる哲学的な問題とも密接に結びついている。
 心理学や認知科学といった経験科学が明らかにしているように、知覚と行為は別々のものではなく、密接に結びついたものである。このことはもはや自明なものとなっている。そこで本発表では「知覚と行為がどのように結びついているか」について考察する。この問いに答えるために本発表では、知覚と行為の関係についての様々な見解を独自の区分で分けた、S.L.Hurley(1998)の分類の検討を行う。特に本発表では、ハーリーがその分類のなかで生態学的見解をどのように扱っているかに注目し、それに解釈を加えることを通して、上の問いに暫定的な答えを与えることを目指す。
 ハーリーは知覚と行為の関係についての分類をするにあたって、知覚と行為の関係が、「直線的」(linearity)あるいは「ダイナミックな循環」(dynamic loopiness)という分け方と、「単に道具的」(merely instrumental)あるいは「道具的かつ構成的」(also constitutive)という分け方をしている。「直線的」とは、一方から他方に向かう結びつきをもっていることを指し、「ダイナミックな循環」とは両者が相互に結びついていることを指す。一方で「道具的」とは、あることが別のことの手段であることを指し、「構成的」とは、あることが別のことを構成している(構成要素である)ことを指す。ハーリーは知覚と行為の関係についての様々な見解をこの区分で分け、整理をしている。ハーリーによれば、知覚と行為の関係についての古典的な見解である@「分離―不等」の伝統(“separate-but-unequal” tradition)において、知覚と行為の関係は「直線的」かつ「単に道具的」であり、A生態学的見解(ecological views)においては「ダイナミックな循環」かつ「単に道具的」であり、B行動主義(behaviorism)においては「直線的」かつ「構成的」であり、C知覚の運動理論(motor theories of perception)、D行為の制御システム理論(control systems theories of action)、彼女自身の見解であるE二段階相互依存説(two-level interdependence view)においては「ダイナミックな循環」かつ「道具的かつ構成的」である。
 はたしてこの分類は妥当なものなのだろうか。ここでは、生態学的見解が本当に「単に道具的」な結びつきしか想定していないのか、について検討する。知覚と行為の密接な結びつきを強調するギブソニアンのような立場からは、彼女の分類は妥当なものにはみえないのではないだろうか。本発表では、Hurleyの分類における生態学的見解の解釈を通して、知覚と行為の相互関係についての暫定的な結論を導き出すことを目指す。